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モデーア突然の事業停止:2025年4月11日の衝撃
2025年4月11日午後、モデーア(Modere)が「23年間の素晴らしい旅路をありがとうございました。愛するコミュニティに奉仕するという困難な決断を下し、事業を閉鎖することにしました」という短いメッセージと共に突然事業停止を発表しました。
史上稀に見る「ラグプル」の詳細
モデーアの閉鎖は、業界内でも「ラグプル(rug pull)」と呼ばれる突然の撤退として大きな衝撃を与えました。通常、MLM企業が経営難に陥る際は以下のような前兆があります:
- 報酬プランの改悪
- 商品ラインナップの削減
- 企業スタッフの大幅削減
- 販売員向けの安心声明の発表
しかし、モデーアの場合、これらの典型的な警告サインが一切見られず、トップリーダーでさえも完全に盲目状態でした。
通告時間の異常さ
従業員への通告:わずか3時間 ユタ州プロボの本社従業員には、午後2時に事業停止が通知され、午後5時までに個人の持ち物を取りに来るよう指示されました。「午後5時以降は、扉は永遠に閉ざされる」と告知されました。
販売員への通告:2時間15分 全世界の販売員(ソーシャルマーケター)には、わずか2時間15分の猶予で事業停止が通知され、同時にウェブサイトが停止されることが発表されました。
販売員からの怒りの声
「販売員と顧客に、事業を閉鎖してウェブサイトを停止するという通知を2時間15分前にするなんて、どうやって夜眠れるのか?」という怒りの声がInstagramに殺到しました。
モデーアとは何だったのか:23年間の軌跡
創業から成長期まで
モデーアは2002年に創業され、前身企業であるNeways Internationalの灰の中から誕生しました。2006年にサンフランシスコのプライベートエクイティ会社Golden Gate Capitalが買収・再ブランド化したのがモデーアです。
Neways時代の問題 前身のNewaysは、オーナーが2006年に脱税で刑務所に送られるという不祥事を経て、モデーアとして再出発しました。
事業規模と影響力
2020年のピーク時:
- 売上高:約975億円
- 事業展開地域:米国、カナダ、オーストラリア、日本、ヨーロッパ、英国、ニュージーランド、インド
- 累計売上:60億ドル(約9,000億円)を達成したと主張
主要製品:
- Liquid BioCell Collagen(コラーゲンサプリメント)
- CURB(2024年9月発売の体重管理サプリメント)
- 美容・家庭用品全般
モデーア独自の「ソーシャルリテール」戦略
モデーアは自社のビジネスモデルを従来のMLMではなく「ソーシャルリテール」と称していました。これは:
- 口コミによる商品推薦の重視
- デジタルプラットフォームを活用した販売
- 「インフルエンサー」としての販売員の位置づけ
しかし、実態は典型的なMLMの報酬システムを採用しており、自動購入(オートシップ)での報酬受給資格などピラミッド構造の特徴を持っていました。
倒産直前のモデーアビジネスプランの実態
ソーシャルマーケターユニレベルボーナスシステム
モデーアは複雑な多段階報酬システムを採用していました。以下は2019年時点での詳細な報酬プランです:
基本的な報酬構造
1. ビルダーボーナス群
- オーガニゼーションツリー上の実績で計算
- 主に組織拡大による報酬
2. プロモーターボーナス群
- カスタマーポッド内の実績で計算
- 顧客販売による報酬
3. ユニレベルボーナス群
- ソーシャルマーケターユニレベルボーナス
- カスタマーユニレベルボーナス
タイトル別の報酬率と条件
ソーシャルマーケティングコンサルタント1(C1)
- 必要条件:150MP/月(約26,700円の自己購入)
- 1レッグ育成/月
- ORGポイント500以上/月(約89,000円)
- 報酬率:ペイレベル1の3%
ソーシャルマーケティングコンサルタント2(C2)
- 必要条件:150MP/月 + 1レッグ育成/月
- ORGポイント1000以上/月(約187,000円)
- 報酬率:ペイレベル1〜2の3%
エリートソーシャルマーケター3(E3)- 最高タイトル
- 必要条件:150MP/月 + 3レッグ育成/月
- ORGポイント400,000以上/月(約71,200,000円)
- 1レッグあたり上限280,000ポイント(約49,840,000円)
- 報酬率:ペイレベル1〜5で5%、ペイレベル6〜8で4%
月1万円稼ぐために必要だった現実
C1レベルでの計算例:
- 自己購入:26,700円/月
- ペイレベル1に63人の150MP購入者が必要
- 粗利10,000円を得るために合計約170万円の組織売上が必要
この数字は、多くの一般参加者にとって現実的ではない高いハードルを示していました。
突然の撤退が販売員に与えた深刻な影響
経済的損失の実態
1. 即座の収入停止 数千人のソーシャルマーケターが一瞬にして収入源を失いました。特に:
- 専業として活動していた販売員
- 月数十万円の報酬を得ていたリーダー層
- 組織拡大に投資していた中堅販売員
2. 在庫商品の価値消失
- 自宅に保管していた商品が無価値化
- 返品・交換が不可能な状況
- 投資回収の目処が完全に消失
3. 顧客ネットワークの無意味化
- 構築してきた顧客関係が無駄に
- 他社への移行が困難
- 信頼関係の損失
心理的・社会的影響
信頼の失墜 多くの販売員は、家族や友人にモデーアの商品やビジネス機会を勧誘していたため、突然の倒産により人間関係にも深刻な影響が出ました。
将来への不安
- MLM業界全体への不信
- 他のビジネス機会への躊躇
- 経済的安定への不安増大
モデーア倒産の背景:訴訟問題と経営悪化
直接的な要因:複数の法的トラブル
1. Body Fuel Unlimited社との商標権争い 2025年3月28日、Body Fuel Unlimited社がモデーアを商標権侵害で提訴しました。同社の登録商標「5-DAY-DROP」に対し、モデーアが類似の「5 Day Drop」というサービス名を使用していたことが問題となりました。
2. 元トップ販売員との契約紛争 モデーアは2024年、トップ販売員のAmber DeLoof氏、Brynn Lang氏らが競合他社に移籍したことで契約違反として提訴していました。しかし、裁判所は「企業として契約していた販売員を個人の契約違反で訴えることはできない」として、モデーア側の訴えを退けました。
3. Justin Prince氏との継続中の訴訟 モデーアの「最も影響力のある販売員の一人」とされたユタ州のJustin Prince氏との間でも法的争いが続いていました。
経営悪化の兆候
販売員の大量離脱 訴訟問題以外にも、販売員の離脱が続いており、これは通常のMLM業界では珍しいことではありませんが、モデーアの場合は規模が大きかったとされています。
売上の減少 詳細な財務情報は公開されていませんが、複数の業界専門家は、売上の減少と法的費用の増大が経営を圧迫していたと分析しています。
業界専門家が分析するモデーア倒産の真因
MLMビジネスモデルの構造的問題
業界専門家のLeah and Todd Gettsは、モデーア倒産の根本原因をMLMビジネスモデル自体の問題にあると指摘しています:
1. 機会重視vs製品重視の問題 多くのネットワークマーケティング企業は、製品の品質や独自性よりもビジネス機会を主体として宣伝しているため、製品の競争力が低下すると事業継続が困難になります。
2. 現代の「機会ホッピング」文化 過去は個人的な人脈を通じて機会が紹介されていましたが、現在はオンラインで容易に複数のMLM企業や宣伝者を見つけられるため、より取引的で忠誠心の低い環境になっています。
3. 長期的なコミットメントの欠如 「一つの会社に旗を立てる」という長期的なコミットメントの概念が、機会を次々と変える風潮により薄れている状況です。
金融・運営面の分析
資本構造の問題 モデーアは現在、Z Capitalの関連会社が過半数を所有していましたが、十分な資本注入や事業再建への投資が行われなかった可能性があります。
法的費用の増大 複数の同時進行する訴訟により、法的費用が経営を圧迫していたと推測されます。
モデーア元販売員の証言と被害の実態
成功を信じていた販売員の証言
長期参加者の証言 「私は以前のMLM企業で7年間活動しましたが、真剣に努力したにも関わらずフルタイムの収入を得ることはできませんでした。モデーアに移って6ヶ月以内に生活できる収入を得られるようになりました」という証言もありました。
73歳の販売員の証言 「私は4年間ソーシャルマーケターとして、そして自分自身の顧客として活動してきました。73歳で50代の時よりも体調が良いです」という健康面での効果を主張する声もありました。
倒産発表後の混乱
突然の通知への怒り InstagramやSNSには「どうやってこんなことができるのか?」「夜どうやって眠れるのか?」という怒りのコメントが殺到しました。
経済的損失の訴え 多くの販売員が:
- 在庫商品への投資損失
- 将来収入への期待の裏切り
- 顧客や友人への説明責任
これらの問題に直面することになりました。
モデーア事件から学ぶマルチ商法の本質的リスク
企業依存の危険性
完全なコントロール不足 モデーアの突然の閉鎖は、販売員が会社の決定や事業継続性に対して全くコントロールを持たないことを明確に示しました。
収入の不安定性
- 企業の決定により一瞬で収入が消失
- 投資した時間と資金の回収不可能
- 将来の収入見込みの完全な消失
MLM業界全体への影響
業界への不信増大 一見安定していた企業の突然の消失により、ネットワークマーケティングが個人のオンラインビジネス構築において有効な選択肢であるかという疑問が強まりました。
高い失敗率の現実 低い参入障壁にも関わらず、ネットワークマーケティングの失敗率は一般的に高く、これは低いコミットメントレベルと関連している可能性があります。
倫理的な懸念
勧誘の道徳的問題 多くの誠実な人々が経済的成功を達成していない機会を推進することの不快感は、モデーア事件により更に増大しました。
モデーア販売員への救済措置と今後の対応
現在利用可能な救済手段
1. 法的手続きの検討
- 集団訴訟への参加
- 個別の損害賠償請求
- 破産手続きでの債権者としての権利主張
2. 保険や保証の確認
- 商品購入時の保険適用
- クレジットカード会社への相談
- 各種保証制度の利用
3. 税務上の処理
- 在庫商品の損失計上
- 事業所得の修正申告
- 税務相談の実施
他社への移行問題
顧客関係の移管
- 類似商品を扱う他社への移行
- 顧客への説明と対応
- 信頼関係の再構築
ノウハウの活用
- 営業スキルの他分野活用
- デジタルマーケティングスキルの転用
- 起業への足がかりとしての経験活用
まとめ:モデーア倒産が示すマルチ商法業界の未来
業界への長期的影響
規制強化の可能性 モデーア事件は、MLM業界への規制強化を求める声を高める可能性があります:
- 販売員保護制度の充実
- 企業の財務開示義務の強化
- 突然の事業停止への予防措置
業界の淘汰加速 経営基盤の弱い企業の淘汰が加速し、より健全で透明性の高い企業のみが生き残る可能性があります。
消費者・販売員への教訓
重要な警告サイン
- 過度な楽観的予測:「必ず成功する」という保証
- 企業情報の不透明性:財務状況の非開示
- 過度な依存要求:企業への完全な依存を求める姿勢
- 法的トラブルの多発:継続的な訴訟問題
推奨される対策
- リスク分散:単一の収入源に依存しない
- 情報収集:企業の財務状況や法的問題の継続的な監視
- 専門家相談:定期的な法的・財務的相談
- 緊急時計画:事業停止時の対応策の事前準備
最終的な提言
モデーアの突然の倒産は、MLMビジネスモデルの本質的な不安定性と、参加者が企業に対して持つコントロールの欠如を明確に示しました。
これからMLMを検討する人へ:
- 「成功への近道」は存在しないという現実の受け入れ
- 十分なリスク評価と資金管理の重要性
- 独立性と自立性を保つことの価値
既にMLMに参加している人へ:
- 企業依存からの脱却計画の立案
- 代替収入源の確保
- 継続的なリスク監視の実施
モデーア事件は、「23年の歴史」「安定した企業」でさえも一夜にして消失する可能性があることを証明しました。この教訓を活かし、より慎重で現実的なビジネス判断を行うことが重要です。
緊急相談窓口
- 消費者ホットライン:188
- 消費者庁:03-3507-9999
- 各都道府県消費生活センター
モデーア販売員の皆様には、一日も早い生活の安定と新たな道での成功をお祈りしています。